2025.02.20 COLUMN
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置き配トラブル増加──盗難・誤配のリスクと自治体の対策

荷物を玄関先などに届ける「置き配」の利用が増える一方で、盗難や誤配といったトラブルの相談件数が急増しています。
再配達の手間を省ける便利さがあるものの、直接受け取らないことによるリスクが顕在化しており、一部の自治体では対策費用の補助を進めています。

盗難・誤配トラブルの現状

東京都消費生活総合センターによると、2023年度の置き配に関する相談は368件と、2019年度(104件)に比べて約3.5倍に増加。
2024年度も4~12月の速報値で361件と、前年を上回るペースです。
国民生活センターにも、荷物の誤配や破損、盗難・紛失に関する相談が増加しています。

例えば、東海地方の40代男性は、15万円の腕時計を購入した際、対面受け取りを指定したものの、自宅の玄関に「置き配してください」というステッカーを貼っていたため、配達員が玄関前に荷物を置きました。
その後、配達完了の連絡で気づいて確認すると、荷物は既に盗まれていました。

消費者センターでは、配達完了メールを受け取ったにもかかわらず荷物が見つからない場合、まず配送業者に連絡し、盗難が疑われる場合は警察への相談を推奨しています。
事業者側にも詳細な調査や補償の確認を求めるようアドバイスしています。

置き配の普及と課題

置き配は、新型コロナウイルス流行時の非接触配達手段として定着しました。
また、2024年からの時間外労働規制によるドライバー不足の深刻化を背景に、国は再配達削減の施策として置き配の利用を推進しています。

宅配ボックスメーカーのナスタが2024年11月に行った調査では、ネットショッピング利用者の72%が置き配を利用した経験があると回答。
2019年の26%から大幅に増加しており、利便性の高さが支持されていることが伺えます。

しかし、経済産業省と国土交通省が2020年にまとめた報告では、置き配は対面配達に比べて配送完了の証明が難しく、雨による汚損や盗難リスクがあると指摘されています。
そのため、利用者と事業者が事前に配達方法を合意することが推奨されています。

自治体や企業の対策

トラブルを防ぐため、事業者側では配送時間の事前通知や、配達完了時の写真送付などの対策を強化しています。
しかし、誤配や盗難の完全防止は難しく、消費者自身による対策も求められています。

その一環として、宅配ボックスの普及が進んでいます。
東京都江東区や埼玉県川口市は、2024年に新築マンションへの宅配ボックス設置を義務化。
国土交通省も、一定の条件を満たす集合住宅への宅配ボックス設置費用の一部を補助しています。

また、東京都では、宅配ボックス設置費用を補助する市区町村に対し、その半額を助成。
山梨県も、27市町村の設置費用補助を財政面で支援しています。
これにより、集合住宅だけでなく戸建て住宅にも宅配ボックスの導入が進められています。

さらに、物流新興企業のイーパー(東京・品川)は、2018年に折り畳み式の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」を開発。
袋をドアノブなどにワイヤーで固定し、配達員が南京錠で施錠する仕組みで、盗難リスクの低減を図っています。

宅配ボックスの普及促進には、自治体だけでなく民間企業の取り組みも重要です。
当店でも、より多くの家庭に宅配ボックスを導入してもらうために、2025年2月20(木)~3月20日(木)まで、専門ECサイトの1周年記念セールや紹介キャンペーンを実施し、宅配ボックスの普及に努めています。
これにより、再配達の削減だけでなく、盗難リスクを抑える手段として、より多くの消費者に宅配ボックスの有効性を伝えています。

今後の展望

再配達の削減に向けた「置き配」のメリットは大きいものの、集合住宅における適切な置き場所の不足宅配ボックスの数が足りないといった課題について、他の専門家も指摘しています。

日本郵便の木野俊輔氏は、宅配ボックスの設置により再配達の割合が減少し、配達の負担が軽減されると述べています。
しかし、宅配ボックスがあっても駐車スペースの確保や在宅確認が必要であり、特に大規模マンションでは宅配ボックスが埋まってしまうことが多いと指摘しています。

また、国土交通省の資料では、宅配便の再配達削減に向けて、集合住宅におけるオートロック解錠デバイスの活用など、多様な受取方法や関係者の連携が重要であるとされています。

さらに、マンション管理組合の最新事情と対策に関する記事では、宅配ボックスの設置が再配達削減に寄与する一方で、設置スペースの確保や管理上の課題があると指摘されています。

これらの意見から、再配達削減のための「置き配」や宅配ボックスの活用は効果的であるものの、集合住宅特有の課題に対する対策が求められていることがわかります。